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友達が欲しかった、少女の話 __

 
 それは、真夜中の広場で友達になってくれる相手を探す少女に関した、ある依頼から帰った数日後。
 
 柔らかな日差しが照らす庭の一角にあるガゼボでのこと。
 比較的シンプルな装飾に作られた丸テーブルを囲むように、類似した装飾の椅子が4つ設置されているその場所で。
 ハーヴェスティは、ジンジャーエールを注いだグラスを傍らに読書。
 その向かいでは、姉のフレデリカがオコジョのリズを構っている。
 ……構っているというよりは、飼い主の元へ行こうとするのを、必死で邪魔しているとも云う。


◆ (姉・フレデリカ…非登録キャラクター)
    キャラの変化を綴るSSもどき 。
 
 

 
「そっち行っちゃやーだー! リズちゃんお顔すりすりー!」

 ――チチッキィッ!
 それまでは大人しく撫でられていたリズも、長いこと遊ばれていては嫌気が差したか、体躯を捻り爪を出してフレデリカへ反撃を開始した。

「――っ、た。 姉様……リズ可哀想だから」
 
 グラスを手に取ろうとしたした丁度その時、指に爪が掠り、思わず声が不機嫌に淀む。
 そんな小さな声の変化だけでも、常日頃からあまり不機嫌な態度を見せられたことの無いフレデリカは、頬を片方膨らませリズから手を離すと、顎をテーブルに乗せて口を尖らせた。
 彼女の執着から逃れたリズは、軽快に足音を立ててハーヴェスティの膝へ降りる。
 微笑む主人とペットの仲睦まじい姿を、不貞腐れながら見詰めるフレデリカ。
 はぁ~~、と諦めの溜息を長く零すと、両腕を振り上げ伸びをした。
 
「アンタもさぁ。 こんっなにお天気なのよ? 本読んで無いで、たまには友達と出掛けなさいな!」

 伸ばした両腕を大げさに広げてアピールしながら、椅子から立ち上がる。
 柱に手を掛けくるりと回ると蒼い髪がふわりと靡き、軌道を美しくなぞっていく。

「ほら、……ん~すっごい気持ち良い!」

 ガゼボの外で日差しを浴び、胸いっぱいに空気を吸い込む姿を穏やかに微笑み見守るハーヴェスティ。
 すると、振り返ったフレデリカから鮮やかに微笑み返されて手招きをされた。
 仕方無いと伝えるように、わざとらしく肩を竦めてからリズを手に抱き、閉じた本をテーブルへ置いてガゼボを出る。
 仰いだ空からは遮蔽無く注ぐ眩しい光。 目を細め、尚も僅かの間は呆けて一歩も動けずに立ち尽くす。
 腕に、フレデリカの肩がトンと触れた。

「出掛けてくれば? お友達誘ってさ。 兄様のお手伝いと、父様の面倒は、今日は私が見てしんぜよう」

 腰に手を充て、感謝しろよと言わんばかりに胸を張って威張るフレデリカを見下ろしながら、今日何度も繰り返されてきた『友達』という単語に悲しく表情が曇ってしまう。

『時間をかけて、いつのまにか自然とそうなっているのが……友達です』

 あの日、少女に云った言葉が脳裏に響く。
(「友達など、もう随分と縁が無かった自分がそんな言葉を口にするのは……白々しかっただろうか」)
 考えてしまうと胸が痛み、この一時は忘れようと軽く頭を振り、空を見上げる。

「……そうだね。 まだ、時間があるから」

「そうだよ! まだお昼を過ぎたばっかりだし、今から誘えば余裕で日暮れまで」

「少しくらい、僕が居なくても大丈夫でしょう。 2人で散歩にでも行こうか、姉様」

 一歩、先に歩み出して声を掛ける。
 すると予想外の返答に驚いた悲鳴を上げて小走りに後をついてきたフレデリカは、わざわざ後ろを歩きながらツンツンと背中を突いてきた。

「はあ!? え、ちょ。 あっ、やだッ! アンタまさか、私に惚れ」

「嫌な冗談はよしてくれないかな、姉様」

「はい」

 しゅんと、口を尖らせて横に並んだフレデリカは、ちらりとハーヴェスティの顔を覗く。
 母が亡くなった日のことも、私のことも、こんな家のことも気にせず友を作り、恋を囁き自由に生きろとは、面と向かって口に出せずにいるフレデリカ。
 そしてまた、ハーヴェスティも。 血は半分しか繋がらずとも、姓を貰った身として兄と父に手を貸したい。フレデリカも早く結婚して自由に、幸せになって欲しいと願っている。
 互いが互いの幸せを想いながら、切り出す勇気はどちらも持たず。
 
 まだ、大切な人を失った日から動けずにいる2人。
 いつか、どちらとも無く歩幅を合わせずに歩く日が、やってくるのだろうか。
 
 
 
 

__ end .
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IC illust : わさこ絵師様

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